パン屋になる。Vol.8
パン工場の釜場で午前中汗だくになり、午後から成形作業をしていたある日、
配置転換を命じられた。 釜担当になりたいおじさんがいて、そのかわりに、私が仕込みにまわるというものだった。 願ってもないチャンスである。 確か、1月だったような気がする。 当然、朝が早い。 3時45分に出勤した。 車で3時過ぎに家を出る。 意外とその時間というのは、道路が凍っていないことに気づいた。 6時に出勤してくる人たちは、つるつるで怖かった、などと言っていたが、 3時台は、凍結していない。 NHK-AMの戦前の歌謡曲が流れるラジオを聴きながら車を走らせるのが日課になった。 日が昇る前の誰もいない、誰の車ともほとんどすれ違わないこの時間。 不可思議な時間だった。 今まで、飲んでこの時間にうろうろしていることは何度もあったが、 毎日起きて、通勤するなど、釣りに行くか山に行くか、それくらいしかないことだった。 寒い。 寒かった。が、凛とした空気が工場内に漂っている。 自分しかいない。 誰もいない工場の薄暗い電灯をつけて、自分のタイムカードを、ガチャン。 缶コーヒーを飲み、着替えをし、気を引き締める。 「もし、俺がミスれば、この工場のラインが今日1日、すべて止まるのだ。」 とんでもないプレッシャーだった。 なぜなら、 また、1人、だったから。 ただ、この経験が、今の私を作ってくれたともいえます。 2度と戻りたくない現場ですが・・・・。 また、痩せてしまった。(笑)
by yui-2910
| 2009-11-17 22:36
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