パン屋になる。Vol.10

高岡の「ブレッド」でも働き始めた私は、休日がなくなった。
周りの人間はとても私の身体を心配していた。
無理もないことだ。
前年に2回も手術をして、入院していたこともあったので。

しかしながら、私はとても楽しかった、のだ。

「ブレッド」に通う週末は私にとって貴重な時間であり、かつ、
工場での信じられないくらいの重労働により、迷いかねないパン作りへの情熱を
ねじれくたものから正常なものへと引き戻してくれた。

意気揚々と初めて厨房に入ったとき、何もできない自分を再確認させられた。

次々と綺麗に成形されたバゲットが、キャンバス地に乗せられていく。
私の成形したバゲットといえば、「ガタガタ」で、均一ではなく、
まったく、いけてない。

気にしないことにした・・・。
「俺は発展途上なのだ」と、言ったものの、とほほ、である。

まず、違ったのは生地の扱い方だ。
極論すれば、中種法で作る工場のパン生地は扱いが非常に乱雑である。
どかーんとミキサーから出して、生地をぶった切り、ボックスに入れる。
それでも耐えうる生地の強さがある。

一方、「ブレッド」では、それは、NGである。
ストレート法の生地で、工場と同じような生地の扱い方をすると、
いい物は、絶対にできない。

「ブレッド」の生地の取り扱いは、とてもデリケートなものだった。
無理な扱いは絶対にしない。

そして、みんな、わきあいあいと、とても楽しい時間だった。

工場との決定的な違いは、皆が同じ方角を向いていることである。
モチベーションが同じ人間同士がやっているという仕事場というものは、
こうも楽しいのかと、思ったものだ。

当初、私は
「すごい、レシピでもあるんじゃないか?」であるとか、
「何か、特別な作り方をしているの「じゃないのか?」とか、
思っていたのですが、そんなものは何もなかった。
ただ、そこにあったのは、
「基本に忠実に作り、こちらに合わせるんじゃなく、生地に合わせる」
それだけだった。

もちろん、裏打ちされた技術や経験、知識が必要とされるのだ。

私は、「ブレッド」で得た事を、工場で、こっそりいかしてみようと考えていた。

今日は、このへんで。
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by yui-2910 | 2009-12-14 22:38 | pann
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